酵母を育てるところから、パンは始まります。
パンをふくらませるのは酵母です。多くのパン屋は製パン用のイーストを買いますが、うちは買いません。下北半島にある果実や花、酒粕から、酵母を自分たちで起こしています。 手に入れるまでに時間がかかり、季節によって力も変わる。扱いにくい相手です。それでも続けているのは、この土地のものからしか出ない香りと食感があるからです。せっけんも同じ酵母からつくっています。
夏秋いちごは、夏から秋にかけて実をつける品種です。下北半島は夏でも涼しく、この栽培に向いた土地とされています。私たちが酵母の原料にしているのは、形やサイズが基準に合わず出荷できなかった実。味も香りも変わらないのに行き場を失っていた果実を分けていただき、瓶の中で発酵させています。
日本酒を搾ったあとに残るのが酒粕です。下北地域の酒蔵で生まれた酒粕から酵母を起こし、パンの発酵に使ってきました。酒粕に含まれるアミノ酸やビタミンなどの働きで、生地はふっくらとした食感に焼き上がります。この酒粕酵母で焼いたパンは、下北ジオパークの認定商品にも選ばれています。
小麦の外皮と胚芽をまるごと挽いた全粒粉は、精製した粉にはない香ばしさと歯ごたえを持っています。青森県産のものを選び、ライ麦と合わせて配合しました。色は少し濃く、生地は重くなりますが、そのぶん噛むほどに穀物の味が出てきます。チーズやスープとよく合う一群です。
01 パンを膨らませる酵母を、買わずに自分たちで起こしています。果実や花、酒粕を瓶に仕込み、泡の出方と香りの変化を見ながら育てる。できあがった酵母液に小麦粉を継ぎ足し、生地を持ち上げられる力になるまで待ちます。市販のイーストのように力が一定ではないので、その日の状態を見て扱います。
02 市販のイーストなら、生地は短い時間で膨らみます。天然酵母はそうはいきません。一次発酵に4時間、二次発酵にも4時間。合わせて8時間、生地を休ませます。急がずに待つあいだに、生地の中で糖が分解され、焼いたときの香りと甘みに変わっていきます。
03 ベーグルは焼く前にお湯にくぐらせます。表面のでんぷんが糊化して膜になり、焼いたときに生地が必要以上に膨らまなくなる。この膜があるから、内側が詰まったあの歯ごたえが生まれます。手間のかかる工程ですが、ベーグルらしさはここで決まります。
果実や花、酒粕を瓶に仕込み、毎日様子を見ながら酵母を起こします。泡の出方と香りで見極めるので、決まった日数はありません。できあがった酵母液に粉を継ぎ足し、パンを膨らませられる力になるまで育てます。
小麦粉と水、塩、そして育てた酵母を合わせます。生地がなめらかにつながるまでこね、商品によってはここで具材を加えていきます。天然酵母の生地は日によって表情が変わるので、毎日同じようにはいきません。
こねあがった生地を寝かせます。一次発酵に4時間。急がずに時間をかけるあいだに、生地の中で糖がゆっくり分解されていきます。待ったぶんだけ、焼き上がりの香りに返ってきます。
発酵を終えた生地を切り分け、一つひとつ手で形をつくります。丸めるもの、輪にするもの、巻き込むもの。商品ごとに形が違うので、そのつど手を変えます。手仕事なので大きさは少しずつ違い、同じ顔のものは並びません。
二次発酵を終えたベーグルを、沸かしたお湯にくぐらせます。この一手間で表面に膜ができ、焼いたときに独特の歯ごたえが生まれます。引き上げて水気を切ったら、すぐに窯へ入れます。